ストックオプションってナンダ?   (2004年9月17日)


会社と従業員の契約

「オプション取引って何?」という方でも、ストックオプションという言葉は聞いたことがあると思います。
ある有名な企業でストックオプション制度が導入された、といったニュースをよく耳にします。

ストックオプションを一言で表すと、「会社が役員や従業員に付与する、自社株に対するコール・オプション」ということになります。
つまり、ストックオプション制度とは、未来のある日時において、現在の株価で自社株を買う権利を、会社から従業員・役員に付与する制度のことをいいます。

従業員は、現在の株価で自社株を買う権利を与えられるので、将来会社の株価が上がれば、(値上がり後の株価)-(過去の株価)を、売却益として得ることができます。
つまり、自分が一生懸命働いて業績が上がり、その結果株価が上昇すれば、利益が自分にも返ってくるというわけです。
株価上昇の恩恵を直接受けられるため、社員の士気上昇にも繋がります。

まぎらわしい和製英語

ストックオプションという言葉は、実は非常に紛らわしいと感じます。
英語圏では、「Stock Option」というと、企業の株券に対するオプションのことを指し、これは一般の投資家が証券会社を通じて取引できるオプションのことです。
このようなオプションのことを、日本では「株券オプション」と呼びます。

日本語の「ストックオプション」に相当する言葉は、英語では「Employee Stock Option(ESO)」となります。
つまり、ストックオプションという言葉は典型的な和製英語で、そのまま英語で使おうとすると違った意味になってしまうという、クセ者です。

 

英語

日本語

一般的な株に対するオプション

Stock Option

株式オプション

企業が従業員に付与する、自社株に対するオプション

Employee Stock Option (ESO)

ストックオプション

嬉しいストックオプション

一般の投資家はプレミアムを支払ってオプションを購入しますが、ストックオプションというのは文字通り会社から「付与」されるわけですから、大変ありがたいものです。

将来株価が下がるとストックオプションの価値は無くなってしまいますが、元々タダでもらった物なので何のリスクもありません。
もし株価が上がった場合は、従業員は権利行使を行うことができます。 権利行使が行われると、会社は自社の持ち株を引き渡すか、または新株を発行して引き渡しを行います。
権利行使を行った従業員は、過去の株価で自社の株を買うことができるため、買ってからすぐに売れば売却益を得ることができます。

税制面で問題点も…

うれしいストックオプションですが、良い面だけでは無いようです。
通常、株を売却して得た利益(キャピタルゲイン)に対しては、10%の申告分離課税が課されます。
しかし、ストックオプションによって得た売却益は、日本では給与所得と同じと見なされ、所得税が課されてしまいます

税の扱いについては、現状あいまいな所があるようですが(※)、株の売却益に対して所得税が課されるというのは非常に理不尽なことです。
ストックオプションを行使した月の所得が極端に増え、多くの税金を払うことになってしまいます。
※ (2005年1月29日追記)
ストックオプションの課税方式に関しては、給与扱いになることを不当とする会社役員などによって、100件を超える訴訟が起こされていました。 しかし、2005年1月25日、最高裁の判決によって、ストックオプションの利益は給与扱いとなることが決定しました。
税制面に問題があるのは事実ですが、ストックオプションというのは面白い制度だと思います。
株価が上がれば利益を得られるという、「株価連動式のボーナス」と言えるかも知れません。

もしストックオプションが、プット・オプションだったらどうなるんだろう、と考えたことがあります。
自分の会社の株価が下がれば下がるほど、利益を得られるということになり、従業員の労働意欲はゼロになりそうです。
それを聞いた投資家は、株をどんどん売り、株価はますます下落。
その結果従業員はますます儲かる―― (しかし会社は破綻)
現実にはあり得ないことですね。
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