伸び悩む“潜在的”巨大市場
松下電器やトヨタ自動車といった上場株式を買う権利、または売る権利を売買する株券オプション取引ですが、日本では1997年に導入されて以来、取引参加者が一向に増えず、取引高も伸び悩んでいます。
日本とは対照的に、欧米では株券オプションが活発に取引されています。
米国には株券オプションを主力商品とするISE(International Securities Exchange)という取引所があり、ISEに上場している株券オプションだけでも年間4億4800万枚もの取引高があります。(2005年実績)
日本と米国の株券オプション取引高を比較してみると、その差は歴然です。
一方、日本では株券オプションという投資商品自体が投資家の間にあまり浸透していないのが現状です。
もちろん、将来的には日本でも株券オプション取引が普及する可能性は大いにあります。
欧米での成功を踏まえて、株券オプション取引が一般の投資家に広く受け入れられるためには何が必要なのでしょうか。
国内の2大取引所、東京証券取引所と大阪証券取引所の最近の取り組みについて、考察してみたいと思います。
日本とは対照的に、欧米では株券オプションが活発に取引されています。
米国には株券オプションを主力商品とするISE(International Securities Exchange)という取引所があり、ISEに上場している株券オプションだけでも年間4億4800万枚もの取引高があります。(2005年実績)
日本と米国の株券オプション取引高を比較してみると、その差は歴然です。
・2005年の株券オプション取引高
米国の株券オプション市場はすでに確立された巨大市場であり、一般の個人投資家から大手の機関投資家まで、幅広い投資家が取引に参加しています。
日本: 1,407,000 枚
米国: 1,369,048,000 枚
米国: 1,369,048,000 枚
データソース:東京証券取引所(2006/3/22)
一方、日本では株券オプションという投資商品自体が投資家の間にあまり浸透していないのが現状です。
もちろん、将来的には日本でも株券オプション取引が普及する可能性は大いにあります。
欧米での成功を踏まえて、株券オプション取引が一般の投資家に広く受け入れられるためには何が必要なのでしょうか。
国内の2大取引所、東京証券取引所と大阪証券取引所の最近の取り組みについて、考察してみたいと思います。
東京証券取引所の取り組み
東京証券取引所(以下、東証)は投資家向けの「株券オプションセミナー」を毎月開催しており、職員による株券オプション取引の基礎知識の説明や、証券会社から講師を招いて具体的な株券オプションの利用方法などを講義しています。
最近では個人投資家の間でも株券オプションに対する関心が高まっており、セミナーが開催される一ヶ月前には申込みの数が定員に達し、受付が終了するという人気ぶりです。
しかし、東証によると、株券オプションセミナーに参加した投資家の多くは、「では実際に株券オプションを取引するにはどうしたらいいか?」という疑問を抱くそうです。
現在、国内の証券会社では、東海東京証券などの一部の証券会社を除いて、株券オプション取引を扱っている会社はほとんどありません。
また、個人投資家向けのオンライン・トレード環境も整っていません。
このような状況では、いくら株券オプションの基礎知識を学んだとしても、取引に参加することさえ困難です。
東証もこういった問題を見かねてか、2006年4月1日より「株券オプション取引サポート・メンバー制度」という新たなPR活動を開始しています。
この制度は、株券オプション取引を積極的に行っている投資家が自主的に「株券オプション取引サポート・メンバー」になれるというもので、メンバーは円滑な取引成立を確保するために、取引所において株券オプション取引の呼値(売買価格の公示)などを行うことができます。
一言でいうと、「投資家の皆さん、株券オプションの普及活動を手伝ってください」という趣旨の制度といえるでしょう。
ただ、一方的に手伝いを求めるだけでは誰も好き好んでサポート・メンバーにはならないので、ちゃんと見返りも用意されています。
東証によると、株券オプション取引サポート・メンバーは次のような資格を得ることができます。
こうして見ると、1はともかく、2と3について一部の人しかメリットを享受できないようです。
このような条件では、一般の個人投資家が進んでサポート・メンバーになるというケースはあまり考えられず、投資セミナー会社の社員や証券業務担当者、または私のような投資関連サイトの運営者が大半を占めることになりそうです。
(私はメンバーになるつもりはないですが……)
東証としてはあまりコストが掛からない制度ですが、株券オプション取引に関する認知度を草の根的に広めようという、かなり気長な取り組みであるといえます。
設備投資の遅れから注文処理に問題が発生し、対応がお役所的との批判もある東証ですが、今後時代のニーズに合わせて株券オプションを普及させることができるでしょうか?
最近では個人投資家の間でも株券オプションに対する関心が高まっており、セミナーが開催される一ヶ月前には申込みの数が定員に達し、受付が終了するという人気ぶりです。
しかし、東証によると、株券オプションセミナーに参加した投資家の多くは、「では実際に株券オプションを取引するにはどうしたらいいか?」という疑問を抱くそうです。
現在、国内の証券会社では、東海東京証券などの一部の証券会社を除いて、株券オプション取引を扱っている会社はほとんどありません。
また、個人投資家向けのオンライン・トレード環境も整っていません。
このような状況では、いくら株券オプションの基礎知識を学んだとしても、取引に参加することさえ困難です。
東証もこういった問題を見かねてか、2006年4月1日より「株券オプション取引サポート・メンバー制度」という新たなPR活動を開始しています。
この制度は、株券オプション取引を積極的に行っている投資家が自主的に「株券オプション取引サポート・メンバー」になれるというもので、メンバーは円滑な取引成立を確保するために、取引所において株券オプション取引の呼値(売買価格の公示)などを行うことができます。
一言でいうと、「投資家の皆さん、株券オプションの普及活動を手伝ってください」という趣旨の制度といえるでしょう。
ただ、一方的に手伝いを求めるだけでは誰も好き好んでサポート・メンバーにはならないので、ちゃんと見返りも用意されています。
東証によると、株券オプション取引サポート・メンバーは次のような資格を得ることができます。
-
株券オプション取引サポート・メンバーであることの表示
メンバーが株券オプション取引の普及活動(セミナーなど)を行う際、説明資料において自らが株券オプション取引サポート・メンバーである旨の表示ができる。 -
取引所からのリンク
メンバーがホームページを持っている場合、東証の株券オプションのページからリンクをしてもらえる。 -
手数料の払い戻し
株券オプションの取引代金が年間累計で1億円を超えた場合には、1億円超の部分に係る取引手数料が払い戻される。
こうして見ると、1はともかく、2と3について一部の人しかメリットを享受できないようです。
このような条件では、一般の個人投資家が進んでサポート・メンバーになるというケースはあまり考えられず、投資セミナー会社の社員や証券業務担当者、または私のような投資関連サイトの運営者が大半を占めることになりそうです。
(私はメンバーになるつもりはないですが……)
東証としてはあまりコストが掛からない制度ですが、株券オプション取引に関する認知度を草の根的に広めようという、かなり気長な取り組みであるといえます。
設備投資の遅れから注文処理に問題が発生し、対応がお役所的との批判もある東証ですが、今後時代のニーズに合わせて株券オプションを普及させることができるでしょうか?
大阪証券取引所の取り組み
大阪証券取引所(以下、大証)には日経225オプションが上場されており、オプションといえば大証というイメージを持つ投資家も多いようです。
2005年の日経225オプション取引高は、一日平均で10万枚を突破し、名実ともに日本最大のオプション市場といえます。
一方、株券オプションの取引高は伸び悩んでおり、大証に上場している株券オプションの一日平均取引高は、2005年は約5,000枚程度にとどまっています。
東証と比較すると約6倍の取引高があるものの、まだ投資家が自由に取引できるような状況ではありません。
しかし、大証は今後3年間で140億円超のシステム投資を行うと発表しており、次世代システムを株券オプション取引のために活用するという方針を打ち出しています。
これまで日本の主要取引所が、大規模なシステム投資によって株券オプションの取引環境を整えるといったことは例がなく、大いに期待が持てる発表です。
また、2006年7月をめどに、日経225先物取引の10分の一単位で取引できる「ミニ日経225先物取引」が開始となる予定です。
現時点ではまだ分かりませんが、今後このミニ日経225のオプション(日経225オプションの10分の一単位で取引できるオプション)が上場となる可能性も大いにあります。
米国ではS&P 500指数先物オプションの小口取引であるミニ S&P 500オプションが導入されましたが、このことがきっかけでオプション取引を始めたという個人投資家が大勢います。
もし日本でも日経225オプションの小口取引が開始されれば、今まで売買単位が大きすぎるという理由でオプションを敬遠していた投資家も参入しやすくなり、オプショントレーダーの間口が一気に広がるかもしれません。
その結果、投資商品としてのオプションの需要が高まり、株券オプションの普及につながる可能性もあります。
…と、期待は膨らむ一方ですが、大証には日経225オプションによる取引実績があるので、新しいオプション銘柄の導入も比較的スムーズに行える地盤があることは確かです。
大証には今後も日本のオプション市場のリーダー役となり、新しい市場を開拓していって欲しいと期待しています。
日本の2大取引所の株券オプション取引に関する最近の取り組みをまとめてみましたが、投資家にとって最大の関心事は「では、どうやったら取引できるの?」という点に尽きると思います。
株の売買はオンライン・トレードで行うことが当然のようになってきた近年、株券オプションの売買もオンライン・トレードで簡単に行うことが出来なければ、投資家から見向きもされません。
そのためには、取引所が証券会社に対してもPR活動を行い、システム面での連携を強化していくことも不可欠でしょう。
ハードルは低くありませんが、株券オプション取引という潜在的な巨大市場が日本に根付くかどうかは、今後数年間の取引所と証券会社の取組みに懸かっているといえます。
2005年の日経225オプション取引高は、一日平均で10万枚を突破し、名実ともに日本最大のオプション市場といえます。
一方、株券オプションの取引高は伸び悩んでおり、大証に上場している株券オプションの一日平均取引高は、2005年は約5,000枚程度にとどまっています。
東証と比較すると約6倍の取引高があるものの、まだ投資家が自由に取引できるような状況ではありません。
しかし、大証は今後3年間で140億円超のシステム投資を行うと発表しており、次世代システムを株券オプション取引のために活用するという方針を打ち出しています。
これまで日本の主要取引所が、大規模なシステム投資によって株券オプションの取引環境を整えるといったことは例がなく、大いに期待が持てる発表です。
また、2006年7月をめどに、日経225先物取引の10分の一単位で取引できる「ミニ日経225先物取引」が開始となる予定です。
現時点ではまだ分かりませんが、今後このミニ日経225のオプション(日経225オプションの10分の一単位で取引できるオプション)が上場となる可能性も大いにあります。
米国ではS&P 500指数先物オプションの小口取引であるミニ S&P 500オプションが導入されましたが、このことがきっかけでオプション取引を始めたという個人投資家が大勢います。
もし日本でも日経225オプションの小口取引が開始されれば、今まで売買単位が大きすぎるという理由でオプションを敬遠していた投資家も参入しやすくなり、オプショントレーダーの間口が一気に広がるかもしれません。
その結果、投資商品としてのオプションの需要が高まり、株券オプションの普及につながる可能性もあります。
…と、期待は膨らむ一方ですが、大証には日経225オプションによる取引実績があるので、新しいオプション銘柄の導入も比較的スムーズに行える地盤があることは確かです。
大証には今後も日本のオプション市場のリーダー役となり、新しい市場を開拓していって欲しいと期待しています。
日本の2大取引所の株券オプション取引に関する最近の取り組みをまとめてみましたが、投資家にとって最大の関心事は「では、どうやったら取引できるの?」という点に尽きると思います。
株の売買はオンライン・トレードで行うことが当然のようになってきた近年、株券オプションの売買もオンライン・トレードで簡単に行うことが出来なければ、投資家から見向きもされません。
そのためには、取引所が証券会社に対してもPR活動を行い、システム面での連携を強化していくことも不可欠でしょう。
ハードルは低くありませんが、株券オプション取引という潜在的な巨大市場が日本に根付くかどうかは、今後数年間の取引所と証券会社の取組みに懸かっているといえます。