東証「Tedex+」が10月5日よりスタート
東京証券取引所(東証)は10月5日より、オプション取引の新システム「Tdex+システム」の稼動をスタートします。
東証の新システムは、すでにNYSE LIFFE(欧州主要デリバティブ市場)で稼動しているシステムがベースとなっており、株式オプション取引などの複雑な注文形態に対応しています。 また、注文処理の時間も従来に比べて大幅に短縮される見込みです。
さらに、新システムの稼動と同時に、オプション取引のマーケットメイカー制度が導入されます。 マーケットメーカーは、オプションの買値と売値を常時提示することで、投資家がオプションを取引しやすい環境を作ります。
言わば、市場と投資家の間に立つ仲介人のような存在です。
米国の先物オプション市場でも、電子市場にマーケットメーカーが参入したことで買値/売値が常時提示されるようになり、オプションの流動性が格段に向上したという経緯があります。(筆者自身、取引における大きな変化を実感しました)
そのため、東証のオプション市場にマーケットメーカー制度が導入されることには、個人的に大きな期待を寄せています。
有価証券オプション・シミュレーター
新システムの稼動に先駆けて、東証は今年9月1日より、株式オプションなどを擬似的に取引できる「有価証券オプション・シミュレーター」を一般公開しました。(オプション・シミュレーターへのリンク)
このシミュレーターでは、色々な相場シナリオに基づいて架空の株式オプションを売買できます。 時間が早送りになっているため、取引開始から満期到来まで数分~数十分で体験できるのが特徴です。
シミュレーターとしての機能はかなり本格的で、オプションの詳細な情報(ボラティリティやデルタ)をいつでも確認できたり、証拠金や手数料も考慮して取引しなければならないなど、現実の取引に必要な知識も自然と身につくようになっています。
「オプションの仕組みについて頭ではわかったけれど、まだ実感がわかない」という人も、このシミュレーターで取引体験をすることで、より実感をもってオプションに取り組めるようになると思います。
東証の本気度
東証は現在、次のような流れでオプション市場の拡大を図っています。
- オプション・シミュレーターを通じてオプションのメリットやリスクを投資家に理解してもらう
- オプションの新システムを稼動させ、株式オプションの売買環境を整える
- マーケットメーカーの導入により、オプションの流動性(取引のしやすさ)を向上させる
これら一連の動きを見ると、東証のオプション取引に対する本気の取り組みが感じられます。
これまでもセミナー開催などを通じて、オプションの認知度を広げようとしていたのは事実ですが、結局は日経225オプションにしか投資家の関心が集まりませんでした。 ところが今度ばかりは、本気で株式オプションの新市場を作ってやろうという意気込みを感じます。
最大のハードルは「ネット証券会社」
しかし、そのためには大きなハードルがあります。
それはネット証券会社の対応です。
オンラインで取引できなければ、ほとんどの個人投資家は新しい商品を取引しようとしません。 自宅の快適なオンライン環境で日経225オプションを取引したことのある投資家が、わざわざ対面営業の証券会社を通じて株式オプションを取引しようと思うでしょうか? ありえないことです。
先日、東証の派生商品部の方からメールをいただく機会があったので、ネット証券各社の対応状況について伺ってみました。 すると、次のような回答をいただきました。
『主要オンライン証券は、個別株オプションに関心をもちながらも、まだ少し様子を見たいという社が多く、マーケットメイクが始まる10月5日時点ではまだ取扱予定の会社がありません。
しかし、中には次なる投資商品として強い関心をもって検討しておられる会社もございます。
私どもとしましては、本シミュレーターへのアクセス数や寄せられたご意見などをオンライン証券さんにフィードバックすることにより、一刻も早い有価証券オプションの取扱いを働きかけていきたいと考えております。
対面営業の証券会社では、何社か取扱い可能な証券会社がありますので、当面は、そうした情報をHPなどで発信していこうと考えています。』
国内の株式オプション取引が普及するかどうかは、ひとえにネット証券の対応によって決まると思います。 これが今後のポイントです。
その他の要因として、民主党政権による法改正や世界的な金融規制の流れなどの逆風もあり、スムーズには事が運ばない可能性もあります。
しかし近い将来、日本での株式オプション取引が本格的にスタートすることを期待したいですね。
東証の株式オプションについて、ネット証券各社の対応状況などの新しい情報が得られましたら、オプション道場でも随時情報を発信していきたいと思います。