4.プット・オプションの売買




■ プット・オプション

前回説明したコール・オプションは、「ある物を買う権利」だったね。
今回は「売る権利」プット・オプションについて学んでいこう。

株式のプット・オプションとは、「ある日時に、ある価格で株を売る権利」を意味する。 「買う権利」が「売る権利」になっただけで、基本的な仕組みはコール・オプションと同じだよ。

株式のプット・オプションの例

株式 株式のプット・オプション
       権利行使価格:1,000円
   プレミアム: 50円
   期日 : 10月1日
プット


上の図のプット・オプションは、「10月1日に株を1,000円で売る権利」になる。


プレミアムが50円ということは、このオプション自体は50円で取引されるということだね。


そのとおり。
「買う権利」が「売る権利」になっただけで、コール・オプションと同じだ。
それでは、プット・オプションの売買の例を見てみよう。

オプション売買日:9月1日

 
オプションの原資産である株式
(9月1日現在の株価は1,100円)
時価1,100円の株式
買い手
買い手
- 50円
プット・オプションを買い、50円のプレミアムを支払った。

プット・オプション1
権利行使価格: 1,000円
プレミアム: 50円
満期日: 10月1日
売り手
売り手
+ 50円
プット・オプションを売り、50円のプレミアムを受け取った。


プット・オプション取引例
この例では、買い手が売り手から、50円のプレミアムでプット・オプションを買っている。
オプションの売買成立日は9月1日で、オプションの期日は1ヵ月後の10月1日だとしよう。


買い手は、「10月1日に、株を1,000円で売る権利」を買ったということね。


そういうこと。 またコール・オプションと同様、オプションの買い手には権利があり、売り手には義務がある。

プット・オプションの買い手は、期日に権利行使価格で株を売却する権利を持つが、これは必ず売らなければならない義務ではない。

一方で、プット・オプションの売り手は、プット・オプションの買い手の要求に応じて、株を権利行使価格で買う義務がある。(※)
自分が売ったオプションを期日前に買い戻した場合は、権利行使に対する義務はなくなる。


買い手は権利、売り手は義務ね。


それでは、この取引の1ヶ月後を見てみよう。
結論としては、株価が950円以下に下がった場合は買い手が利益を得て、売り手が損をすることになる。
逆に、株価が950円以上にとどまった場合は、売り手が利益を得て、買い手が損をすることになるよ。

■ケース1: 10月1日に株価が950円以下の場合

 
満期日の株価が
900円に下落
時価900円の株式

株価下落
買い手
買い手が利益
+ 50円
株を900円で買い、すぐにプット・オプションを行使(権利行使)して1,000円で売れば100円の利益を得られる。

最初にオプションのプレミアムに50円支払ったので、トータルで1株あたり50円の利益。

コール・オプション2
権利行使価格: 1,000円
プレミアム: 100円
満期日: 10月1日
売り手
売り手が損失
- 50円
プット・オプションの売り手は、買い手の要求(権利行使)に応じて、時価900円の株を1,000円で買い取らなくてはならず100円の損失となる。

最初にオプションのプレミアムとして50円受け取ったので、トータルで1株あたり50円の損失。


プット・オプション 取引結果1
このように、期日までに原資産の価格が十分に値下がりすれば、プット・オプションの買い手は利益を得て、売り手は損失を被ることになる。 コール・オプションとはちょうど反対だね。

またコール・オプションと同じように、期日前にオプションを転売したり、売ったオプションを買い戻したりもできるよ。

では次に、原資産の価格が下がらなかった場合を見てみよう。

■ケース2: 10月1日に株価が950円以上の場合

 
株価は1,100円で
変わらず
時価1,100円の株式
 
買い手
買い手が損失
- 50円
1,000円で売る権利を保有しているが、株価は1,100円なので、権利行使をするメリットがない。(権利放棄)

オプションのプレミアムとして最初に50円支払ったので、トータルで1株あたり50円の損失。

プット・オプション1
権利行使価格: 1,000円
プレミアム: 0円
満期日: 10月1日
オプションの権利放棄
(期限切れ)
売り手
売り手が利益
+ 50円
売ったオプションが期限切れ(0円)になったので、何もする必要がない。

オプションのプレミアムとして最初に50円受け取ったので、トータルで1株あたり50円の利益。


プット・オプション 取引結果2
オプションの買い手は「株を1,000円で売る権利」を保有しているが、肝心の株価は1,100円のまま変わっていない。
1,100円で売れる物を、あえてオプションの権利を使って1,000円で売ろうという人はいないよね。 つまり、このプット・オプションは全く価値が無くなってしまった。


オプションの買い手は権利放棄することになる?


そうだね。 権利を行使するかどうかは買い手側の自由だから、メリットがない場合には権利放棄することになる。
買い手が権利放棄することで、売り手側は何もする必要がなくなり、最初にプレミアムとして受け取った50円がそのまま利益になる。

この例では、株価が期日に950円を下回るかどうかで、買い手と売り手の損益が分岐しているよ。
ここで、買い手と売り手の損益分岐グラフを見てみよう。
プット・オプション 買い手の損益


損失は、最大でもオプションのプレミアム料だけなんだね。
でも、株(原資産)の価格がすごく値下がりすれば、利益はどんどん大きくなる可能性があるということか。


そのとおり。
コール・オプションと同様、オプションの買い手は「損失限定、利益無制限」となる。

ただ、株価はゼロ以下にはならないから、正確には無制限の利益が得られるわけではない。 これはコール・オプションとは異なる点だよ。
といっても、オプションのプレミアムに比べてはるかに大きい利益が得られる可能性があるから、便宜上は「利益無制限」と覚えておいても問題ない。

では次に、プット・オプションの売り手の損益グラフを見てみよう。
プット・オプション 売り手の損益


最大利益はオプションのプレミアム料に限定されているけど、株価がすごく値下がりしてしまうと、損失はどんどん膨らんでしまうってことか。


ちょうど買い手と正反対だね。
オプションの売り手は、「利益限定、損失無制限」ということになる。

コール・オプションと同様、プット・オプションの売り手は利益を得られる可能性が非常に高い。 上の例だと、株価が上昇や横ばい状態になればもちろん利益を得られるけど、もし株価が下がったとしても、950円以下にさえならなければ利益を得られる。

ところが、株価の大暴落のような局面に遭遇してしまうと、売り手は大きな損失を被ることになるから注意が必要だ。


逆に買い手の方は利益を得る可能性は低いけど、もし株価がタイミングよく大きく下げた場合には、投資資金の何倍もの利益を得ることが出来るんだね。


そういうことになるね。
プット・オプションの売買では、株価と損益の関係がコール・オプションとはちょうど反対になることを覚えておこう。

以上で、オプショントレードの基本であるコールの買いと売り、そしてプットの買いと売りの4種類について学んだことになる。
もうオプションについて7割は分かったようなものだよ。


やりーっ。 思っていたより難しくないかも!


といっても、最初はコールやプット、買い手や売り手などがごちゃ混ぜになってしまい、混乱しやすいのも確かだ。

そこで、次回はコール・オプションとプット・オプションの仕組みについて、まとめてざっと復習しておこう。


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