クリアリング・ハウスによる保障

米国の先物取引所は、クリアリング・ハウス(Clearing House)と呼ばれる決済会社と提携して業務を行うことが義務付けられています。

クリアリング・ハウスは、取引所で行われる売買を詳細に追跡し、その日利益を得たトレーダーに対しては利益を支払い、損失を出したトレーダーからは損失分を受け取ります。
全てのトレーダーはクリアリング・ハウスに対して売買ポジションを持ち、反対のポジションを持っているトレーダーとは直接関わりを持ちません。

<米国先物市場のクリアリング制度>

米国先物市場のクリアリング・ハウス

たとえば、あなたと反対のポジションを持ったトレーダー(買いポジションに対する売りポジション、または売りポジションに対する買いポジションを持ったトレーダー)が損失を出して破産してしまった場合でも、クリアリング・ハウスはあなたに対して確実に支払いをしてくれます。

この仕組みのおかげで、あなたは反対側のポジションを持ったトレーダーのことを気にする必要がなく、安心して取引を行うことができます。 さらに、取引所で行われる売買は全てクリアリング・ハウスによって記録されるため、市場を操作しようとする取引はいかなるものであっても排除され、市場の透明性が確保されます。

また、割り当て(オプションの買い手が権利行使をした際、オプションの売り手の中から権利行使に応じなければならないトレーダーを任意に選び出すこと)も、クリアリング・ハウスが行います。

アメリカの先物市場では、取引所から完全に独立したクリアリング・ハウスが80年前から存在しています。 市場の透明性と取引の安全性こそが、アメリカの先物市場が世界中の投資家から信頼され、世界一の取引量を誇っている理由でもあるのです。

一方、日本の先物市場では、2005年5月に「改正商品取引所法」が施行され、決済専門の機関がようやく整備されました。


取引所の基金による保障

また米国の先物取引所のスタッフは必ずクリアリング・ハウスの会員にならなくてはならず、この会員達が基金を拠出し合ってクリアリング・ハウスを支えています。

この基金により、万が一クリアリング・ハウスだけでは支払い切れない損失が発生した場合でも、トレーダーの利益が最優先で保護される仕組みになっています。


ブローカーによる保障

さらに、米国の先物・オプション取引を扱うブローカー(ネット取引業者)の資金保全性も特筆すべきです。 例えば、米国のオンライン・ブローカーの大手であるInteractive Brokers社の場合、投資家の資金を保護するために次のような仕組みを備えています。

  • 顧客の口座資金は完全に分離して保護
  • Securities Investor Protection Corporation (SIPC)による50万ドルの保障
  • さらにロンドンの保障会社「Lloyd’s」による2,950万ドルの保障

つまり3,000万ドル(約30億円)までの口座であれば、資金は完全に保障されていることになります。

このように投資家を保護するセーフティネットが何重にも張られているからこそ、世界中の投資家が米国の先物市場に集まり、日々活発な取引が行われているのです。


国内における“先物オプション詐欺”とは?

米国の先物オプション市場には悪徳業者によるリスクが無いかというと、そうとも言えません。
日本国内では海外の先物・オプション取引を規制する法律が無いことから、悪徳業者が詐欺に利用するケースが頻発しています。 (参考:悪質な海外オプション取引業者による被害

こういった「海外先物オプション詐欺」は日本の法律の抜け穴を悪用したものであり、ほとんどが日本の仲介業者によって行われているという特徴があります。 これは米国市場の安全性とは直接関係がなく、日本の省庁のずさんな管理体制が生み出した問題といえます。


取引は現地のブローカーを通じて行うこと!

アメリカ人の顧客を多く持つ現地のオンライン・ブローカーに口座を開くことが、詐欺に遭わないための最善策となります。 前述のInteractive Brokers社は、筆者も利用しているおすすめのブローカーです。

ただ、米国のブローカーであっても手数料が高かったり、サポート体制が整っていなかったりする会社もあるので、取引を行うブローカーは慎重に選ぶ必要があります。